タバコの価格が1箱1000円に!? 政権交代と同時に、日本でもいよいよ現実味を帯びてきたタバコ税の増税。路上喫煙防止条例の制定やタクシー禁煙化など、公共の場でのタバコ規制が進む近年。「最近ただでさえ肩身の狭い思いをしているのに、そのうえ増税なんて…」愛煙家の方々からは、嘆きにも近い声が聞こえてきそうだが…。そもそもタバコの価格や喫煙率など、日本のタバコ事情は、世界と比べてどのような状況にあるのだろうか? 今回は、タバコにまつわる様々なランキングを公開。知ってました? 日本は、世界的に見ても、大変ヘビースモーカーなお国なんですよ。  


 

 タバコ税の増税が議論される際、必ずと言っていいほど引き合いに出されるのが、欧米の先進諸国のタバコ価格。「日本は、欧米の先進諸国と比べてタバコの価格が安すぎる」なんて言葉を、よく耳にすることだろう。それもそのはず、タバコの価格が高い国ランキングを見れば納得。世界で最もタバコの価格が高い国、ノルウェーは、1箱なんと11.48ドル。日本(1箱=2.82ドル)の4倍以上も高額なのだ。さらにランキングを見ていくと、2位のイギリスも10ドル以上。そして、欧米の先進国がズラリと上位に並ぶ中、GDP世界第2位の日本はというと、トップ20にほど遠い40位にランクイン。タバコ税だけを比較してみても、欧米の先進諸国との差は顕著に見てとれ、1位のノルウェーが、1箱あたり約8.7ドルでのタバコ税であるのに対し、日本は約1.7ドル。タバコ1箱の価格に占める税率も、上位国は70%~80%と、日本の60%を10%以上も上回っている。(ちなみにアメリカは、州によって税率が異なるので一概には言えないが、トータル的に見ると、価格に占める税率は約4割。世界的に非常にタバコ税の安い国となっている。)なるほど。世界の流れは「タバコ=贅沢品」。筆者も愛煙家のため、増税はして欲しくはないのだが、この現状を見ると、仕方なしと思えてきてしまう…。  


 

 ちなみに、「それだけ価格が高ければ、上位国はさぞ喫煙率が低いのだろう」と推測したいところだが、各国の喫煙率を見ると、あら不思議。実は1位のノルウェーでさえ3割以上が喫煙者。年々、喫煙者が減少している日本の喫煙率は29.3%で、タバコ価格の上位国と比べても決して高すぎる数値ではないのだ。また、欧米の先進諸国では、男性と女性の喫煙率の差が小さいのも特徴で、中にはスウェーデンやアイスランドなど、男性よりも女性の喫煙率が高い国もある。日本も、男性の喫煙率は年々減少傾向なのだが(ちなみに昭和40年頃の日本は、男性の喫煙率が80%を越えていたというから驚きだ)、女性は増加傾向にある。  

 さて、喫煙率はさておき、欧米の先進諸国と比べ、日本はタバコの価格が経済レベルの割に安い水準にあるのは事実。これに関しては、次のランキングでも象徴するデータが見て取れる。国民一人あたりのタバコ消費量が多い国、すなわちヘビースモーカー国ランキングからを見てみよう。  

 
 

  タバコを吸わない方にとっては心外かもしれないが、日本は国民一人あたりのタバコ消費量が2,028本と、世界で12番目にヘビースモーカーな国という結果に。しかも、先のランキングで日本よりも喫煙率が高かったノルウェーは82位(493本)。イギリスも790本の63位と、欧米の先進諸国の多くが日本よりも半分以下の数値となっているのだ。これにはやはり、タバコ価格が大きく影響していると考えられる。ちなみに、価値の指標として、各国におけるタバコ1箱の価格とマクドナルドのビッグマックの価格を比べてみると、日本は両者がほぼ同じくらいの価格。ヘビースモーカー国ランキング第7位に入ったロシアは、15%ほどタバコの方が低価格。そして、アメリカの場合は約1.5倍タバコの方が高く、イギリスに至っては、約2.5倍もタバコの方が高額となっているのだ。ヘビースモーカー国ランキング上位の国ほど、タバコを気軽に購入できる環境であることがわかるだろう。またこの結果は、価格はもちろんのこと、各国の禁煙政策も大きく関与していると考えられる。冒頭でも軽く触れたが、日本では近年、公共の場でのタバコ規制が進んでいる。しかしこれは、欧米の先進諸国ではもはや当然のことで、屋内の公共の場はもちろん、パブなどの酒場も含め、飲食店でも全面禁煙を実施している国も多い。また、タバコの広告を全面的に禁止したり、メディアで喫煙シーンを流さない国もある。公共の場における受動喫煙の可能性を一切排除することはもちろん、健康に害を及ぼす、喫煙そのものを抑制しようというのが、グローバルスタンダードなのだ。このような禁煙政策もあり、欧米の先進諸国では喫煙率の数値以上に、タバコの消費量が減っているというわけだ。ちなみに、国単位で見た場合のタバコの消費量が多い国ランキングは以下の通り。  


 
 トップは2位のアメリカに約6倍の差を付け、ブッチギリで中国。世界一人口の多い国は、愛煙家の数も世界一多く、その数は3億5千万人以上。消費量もハンパではなく、実に世界のタバコ消費量の3分の1以上を同国だけで占めているのである。また中国は、生産量においても世界一で、これまた世界の3分の1以上のシェア。まさに世界一のタバコ大国なのである。その中国、そしてアメリカに次いでタバコ消費量が多い国は、3位にロシア、4位に日本が続き、その後ろは、インドネシア、ブラジル、インド、フィリピン、ベトナムと、BRICsやアジアの途上国が名を連ねる。先進諸国と比べ、アジア・アフリカの途上国では、まだ国を挙げて禁煙政策が行われていない国が多いのが現状。タバコ消費量も経済成長に合わせて増加している。ちなみに日本は、喫煙率の減少に伴い、国内のタバコ販売数量が1996年度の約3,500億本をピークに減少傾向。今後、増税など禁煙政策が強化されれば、さらに消費量が減っていくことが予想される。
 

出典元:(WHO)Tobacco Atlas 2009